解体工事やその他建築工事の現場で、欠かすことのできない「足場」。町を歩いていて足場に囲まれた建物を見ると「あ、どこか直すのかな」「取り壊すのかな」とつい目をやってしまうものですが、素人だと「足場にもさまざまな種類がある」という区別まではなかなかつかないものですよね。
今回は意外にたくさんの種類のある足場をひとつひとつ紹介します。それぞれにいいところとそうでないところがあるので、特徴を押さえていきましょう。足場の費用相場の計算方法についてもお話します。
足場の種類
くさび足場(くさび緊結式足場・ビケ足場)
もっとも一般的な足場がこれです。通常の改修工事や解体工事で組まれる足場で、ハンマー1本で組立て・解体ができるため、できあがるまでの時間が比較的短いというメリットがあり、主に低〜中層の建物の工事で使用されます。
凹凸がついた金具(くさび)をハンマーで打ち込み、部材同士をつなげて組み立てていくため、こう呼ばれています。部材がユニット化されているので、ハンマーだけで組立てが可能となっているのです。結束もしやすいのでコンパクトに持ち運び可能で、輸送コストも抑えられます。
さまざまな形状の建築物にも対応できるうえ、亜鉛メッキ処理により錆に強く、耐久性も安全性も高いのでコストパフォーマンスに優れていますが、設置できない場所もあるのがデメリットです。ハンマーでたたく作業がほとんどなので、騒音が発生しやすいところも弱点といえます。
枠組み足場(ビティ足場)
強度の高い鉄製の部材を使用するので、安全性が非常に高く、大規模な改修や解体工事においても使われる足場です。
構造が簡単で各部材が軽量で扱いやすいうえに強度もあるため、高層建築物にも使用することが可能となっています。ハンマーを使わないので、騒音がほとんどないのもメリットでしょう。
部材が大きく、大掛かりな足場になるので、隣家との隙間が狭いなどの敷地では設置不可能なことがあります。また、設置場所だけでなく搬入経路や部材置き場にも一定の広さのスペースが求められる点も、デメリットに感じられるかもしれません。
単管足場
鉄パイプを組み合わせて建てる足場です。単管をクランプとボルトで連結させるという点がくさび足場との違いであり、足場の形状が比較的自由に変えられるので、狭い場所でも設置可能でさまざまな建物の形に対応できるというメリットがあります。
組立ては、時間はかかりますが工程自体は簡単で、かつコストも低めなのでDIYでもよく用いられるほどです。
ただし床となる部分がなく、平行に並んだ2本の鉄パイプの上で作業することになるので、安全性が低く、また足場の上にものが置けないため作業員は常に片手がふさがった状態での作業をしなければいけないこともあり、非常に危険な足場といえます。
単管ブラケット足場
床になる部分がなく、安全性の乏しかった単管足場の弱点を補うものが、単管ブラケット足場です。単管に、足を乗せる板をボルトで固定しており、足をのせて歩く場所がきちんと確保された状態になっています。
ボルトが緩んでしまうと足場が揺れるので注意が必要であるのと、床面を設置する分単管足場よりも工期が長くなってしまう点が、デメリットといえばデメリットでしょうか。しかし安全面には代えられませんよね。
脚立足場
脚立と踏板をゴムバンドで結んで足場とする、簡易的なものです。
脚立を横に並べ、踏板を脚立の間に渡して結束する、という形の足場で、組立てや解体は非常に簡単ですが、とにかく簡易的な足場なので安全性は低く、脚立がベースであるため高さも限られます。
建物全体の工事というよりも、部分的な補修や改修工事の際に使われることが多いのですが、転落の危険が常につきまとうため、高度がないといっても十分な注意が必要です。
吊り足場
地面から組み上げていく通常の足場とは逆で、上から作業床を吊り下げるタイプの足場です。落下などのリスクが高く、安全性の確保を慎重に行う必要のある足場ですが、地面に足場を設置することができない橋梁やプラントなどの工事では、重宝されています。
移動式足場(ローリングタワー)
基本的には枠組み足場と同じ構造の足場の下部に、キャスターなどがついていて、移動が可能になっている足場です。昇降用のはしごや作業床・手すりも一緒に組み込まれていますが、基本構造が枠組み足場なので、組立て・解体は比較的簡単です。
ただし自由に移動ができる分、作業中はキャスターが動かないようにしっかり固定しておく必要があります。また、設置できる場所が限られているといった弱点もあります。
足場の費用相場
解体工事費用の中には、足場の設置費用というものも含まれています。足場の費用相場はどのくらいなのでしょうか。
足場の面積の計算方法
足場の費用相場を出す計算式のお話をする前に、まずは「足場の面積」の出し方について説明しましょう。
足場は、住宅の外壁をぐるりと囲うように設置するわけですが、この足場を外から見たときの、足場の側面の面積の合計が「足場の面積」となります。
四角形の面積を求める式「たて×よこ」に、足場の面積を求める式をあてはめてみると、「住宅の高さ×(住宅の外周+8m)」となります。「+8m」が何かというと、足場というのは外壁から少しだけ離して住宅を囲うため、足場の外周は住宅そのものよりも少し長いものになります。それが大体8mと統一しているのです。
この「住宅の高さ×(住宅の外周+8m)」が足場の面積を出す式ということです。
足場費用の目安
足場全体の費用は「足場の面積×足場代の単価」という式で出すことができます。
足場の面積は、前述したように「住宅の高さ×(住宅の外周+8m)」なので、これに足場代の単価をかけるわけなのですが、単価の目安は前述した足場の種類によって変わってきます。
・くさび足場・・・1㎡あたり800円~1200円
・枠組み足場・・・1㎡1000円~2000円
・単管足場・・・1㎡600円~800円
・単管ブラケット足場・・・1㎡800円~1200円
・脚立足場・・・1㎡300円~500円
上記により、最終的な足場費用は、「住宅の高さ×(住宅の外周+8m)×足場代の単価」で出すことができるというわけですが、他にもさまざまな要素が絡み合って最終的な金額が算出されます。
まずは業者に現地調査に来てもらい、見積をしてもらって正確な金額を出してもらうことが大事です。
安すぎる足場代には要注意
上記で足場費用の目安の計算方法を提示しましたが、一般的な解体工事であれば全体の工事費用の20%程度は足場費用が占めています。
それよりも極端に安い、もしくは「足場費用無料」をうたっているような業者は、明らかに何らかの事情があると疑っていいでしょう。足場費用を無料にした解体工事で、利益を出せるようなものではないからです。結局は安全面を犠牲にしたり、廃棄物の処理で不正を行ったりして帳尻を合わせているようなことが多いのです。信用に値しないといっても過言ではない業者なので、引っかからないようにしましょう。
まとめ
高所作業のために工事現場では必要不可欠な存在である「足場」。よく見るといろいろな種類があります。安全性の高いものはそれだけ組立てに時間や手間がかかってしまう傾向にありますが、作業員の命を守るものである以上、もっとも大事にしたいところですね。
足場費用は、下手に削ろうとする部分ではありません。安全に直結するところなので、施主としても無茶な値引き交渉などで足場費用を安く抑えようなどということは考えないようにしましょう。